Sato's Novel 2-1
History of Farland
「迷星の大陸」外伝
act.1
- 【語り部・真夜中の珊瑚亭主人ジャグ・パーナル54才】
- よう! どうした? 時化た面してよ……。
- 今回の冒険は成功だったんだろ?
- じゃんじゃんやってくれよ、何だったら店中の酒を全部飲み干しても構わないぜ!
- もうすぐこの【自由都市アウグステ】の200年記念祭! 目出てえじゃあねえか! なあ!
- なんだよ……、また女の事で悩んでいるのか? 進歩ねえな……。ほら、血ビールだ、グウウっとやってくんな!
- おいおい、美味いって面してくれよ、入ってきた客が逃げちまうよ……。え? 今度という今度は振られたかもしれない……って?
- 例の魔術師ギルドの事務をやってる街娘の事かい……?
- なんだ? 浮気でもしたのかよ?
- そんなおっかない顔やめてくれよ、冗談だよ、冗談。
- しかしまあ、良くもそれだけ不幸な顔が出来るよな……関心するぜ、まったく……。ファーランドの不幸を1人で背負い込んだって面だぜ……。血ビールの気が抜けちまうよ。
- 今度はなんて言われたんだ?
- ほう……結婚を申し込んだ?
- で?………………。
- 冒険者を辞めて、一緒に働いて欲しいって?
- まあ、浮き草みたいな生活じゃあ、女だって将来不安になるわな……。
- で、何て答えたんだ?
- ……辞められない?
- ………………そしたら怒って帰ってった?
- そりゃそうだろうな……。あの街娘は諦めるしかないんじゃないか?
- おいおい、そんなにいきり立つなよ……。
- 落ち着け、まあ、こういう『男と女』の問題を真剣に考えるのは良いことさ、でもな……常に自分の思う通りに相手が思ってくれると考えたら大間違いさ……。初代皇帝ファナ・アウグステも言ってるだろ、【良いことも在れば悪いこともある】ってな……。
- 昔は言ったもんだぜ、特に、女に誠意を示すには、このアウグステじゃ【ドブを浚って道を開く】ってな。
- 女を手に入れたきゃ、相応の苦労と汚れてナンボって事だ。
- もちろん、その苦労がいつも報われるとは限らない。ほとんどが徒労に終わる。
- まったく虚しいもんだぜ…………。
- だがな、そんな苦労が、そんなつもりで苦労したとは思っても見なかった本人の、全く知らないところで思わぬ大物をつり上げる羽目になったって話しもあるんだよ、このアウグステにはな……。
- その男は、いつものように、冒険に行っては、たまに稼いだ金でその日暮らし、酒場で女を口説いたんだ。
- 「君のような美しい女性は初めてだ……」
- なんて苔が生えそうな臭い台詞で、その女が何人目で、もしかしたら何回目かも知れないのに、まったくどうして、生まれついての女好きって言うのか、全身全霊を込めて口説いていたって話しだぜ。
- 一応、その男も、あの『アウグステ建国』に大分活躍した六英雄の1人、名前は、あんたも知っているだろう……『ロック』、初代皇帝ファナ・アウグステのダンナ、つまり2代目皇帝フィロスの父親さ。
- まあ、六英雄って言えば、この大陸史に連なる英雄『銀光の牙』や『影断者』と並んで、『大陸の剣のクリス』やあの問題著書【アーリンの日記】でも有名な『アーリン』、『魔道の大家シルビス』なんかの方が後の活躍でも、国民にも今だ大人気を誇っているがな……。それに比べれば、ロックの人気は燦々たるものだよ、『ロリコン王』とか『鬼畜』とか言われ続けてな……。
- 奴、ロック自身は、その王国設立の栄誉を受けなかったらしい……。金も地位も思いのままだってのに、何も受け取らなかった。
- 他の者が、大きな冒険に参加しようが、貴族に取り立たされようが、あの男はいつまでも『街の冒険者』であり続けたって言うから偉いんだか馬鹿なのか……。今でもその話題は、アウグステ史を研究する者に取っては答えが出ないままらしいぜ、まあ男としてスゲエ奴だって言えるかもな……、自分で在り続けた……泣かせるね……。
- ただ、その時、栄誉としてかどうかはわからねーけど、奴、ロックは1つの願いを出した。
- それは、ロック自身、何でも生まれ出た名前が気に入らなくてな、だからといって、自身が付けた名前もどうもしっくりこない。
- だから、その建国を機会に初代皇帝ファナ様に『名前をくれ!』と言ったらしい。
- ファナ様は、『わかりました……』って言ったっきり、国務に追われ、それっきり……7年の歳月が流れたそうだ……。
- そして、その後、電撃結婚!
- まあ、当時にしてみれば、あの初代皇帝ファナ様を奪った男として、相当、嫉妬されたらしいぜ。
- そりゃそうだろ、何て言っても、初代皇帝にして国民のアイドル。200年たった今でも、そのファンクラブの会員は増え続けているって話しだ。
- 『アウグステの男は、一度はファナ様に惚れる』って格言が在るくらいだからな。
- ほれ、この店にも、ファナ皇帝の肖像画があるだろ……。酒場に取っては、酒と椅子、テーブルにファナ様って言われるくらい必須アイテムなんだぜ……。
- どうだ、家のファナさまも美しいだろ……な。
- 当時、17歳を迎えた超絶美少女のファナ様が、なんとこの城下町、当時創立3年の出来たてのこの『真夜中の珊瑚亭』に一部の信用の置ける衛兵を連れてお忍びでやって来た。
- もちろん、ロックに会う為だ。
- その頃のファナ様と言えばオランの王子に国を挙げての求愛を迫られていた。おいおい、2国併合か……? なんて噂も上がった位だ。
- その他に、アレクラスト大陸の貴族、王族から毎日恋文の嵐、まさに選り取り見取って状態だ。
- だが、ファナ様は、相も変わらず、酒場で目に写る女を口説きまくる7年ぶりに見るロックを捕まえ、こう告げたそうだ。
- 『7年前……あなたは、私を抱きました……。よって成人した私と、明日結婚の義を執り行います』
- 俺の曾々々々々爺さんが言っていたとよ、『酒場の時間が止まった』ってな…………。
- もちろん、真っ赤に酔っていたロックの顔も、リザードマンみたいに蒼く成ったって話しだ。
- 前後不覚となっていたロックの口から出た言葉は、たった一言…………。
- 「………………え?」
- だったそうだ。
- すると、みんなのアイドル、初代皇帝ファナ様は、その透き通るような白い肌を赤く染め、小さく、叱咤するように、
- 『忘れたとは言わせません。あの時、あの場所で抱かれた時から、ファナは貴方の妻となったのです……、年齢がそれを邪魔しておりました。得心があったなら、幸せになさい!』
- 小さな肩をふるわせて、ファナ様は言ったらしい……。
- そして、ファナが最も信頼を寄せる、衛兵を率いる六英雄の1人、『女100倍将軍のシルビア』の指揮の元、まるで捕らわれるように城に護送されて行ったって話しだ。
- 罪人さながらにな……。
- でも、その時のファナ様の顔は、本当にお幸せそうだったって話しだ。
- 抱いたってのは、ファナ様の言い分で、実際は、あのオランの悪大将『フラネ』から逃げる時にロックがファナ様を抱えて逃げたのを言っているらしい。【アーリンの日記】でもそんな下りがあったって話しだ。
- 多分、その時から、建国の六英雄以上に、ファナ様に取って、最大の英雄は『ロック』だったって事さ。
- 7年間ぞっこんだったのさ、その『欲無き英雄ロック』にな……。捧げるのは自分自身…………。そう思われたことをロック本人は知りもしなかっただろうぜ……。
- ともかく、次の日、幸せそうなファナ様の横に、多分、一睡も出来なくて真っ赤に目を腫らしたロックの姿があったって話しだ。
- このアウグステの石畳が、国中の男の涙で川のように流れていったって話しだ。
- ほら、後ろ、見て見ろよ、あんたの意中のお嬢さんが来てるぜ……。行ってやんなよ……。
- 男と女が過ごす場所にしちゃ、ここは少し騒がしすぎる……。衛兵でも連れて来たってんなら話しは別だがな……。
- お代はいいさ、今夜は俺の奢りだ。
- また来てくれよ。
- そうそう、初代皇帝ファナ様の夫となった、ロックはその後、政治の表舞台には現れなかった。彼は、生涯、裏舞台で妻のファナを支えたって話しだ。
- そして、かつて名乗っていた、『ロッツ』って名前「腐る」って意味があるらしいんだが、その名前をファナ様は改名させた。約束通りな……。
- 新しい、彼の本当の名前は、『ロック』…………この世界の、魔術師の魔法と同じ意味。
- つまりファナ様からの宣言さ、 【あなたに鍵を掛けます】、つまり一生離さないって事さ……。だから、あんたも捕まえたつもりが捕まったって事もあるんだぜ、まあ、ロックの場合はかなり特殊だがな…………。
- え? じゃあ『アン・ロック』があるから良いって?
- 難しいぜ、達成値2000だぜ……出せるかい?
- おいおい、本気にするんじゃねーよ、それこそ野暮ってもんだ。
- まあ、がんばりな、ファナ様の加護があらん事を祈っているぜ。
- じゃあな………………。
Commentary
解説
- どうも……、すっかり乗せられて、このような小説を執筆してしまいました……。
- ファーランドって、一応、ルールふまえていれば何しても良いって、書いてあったような…………。
- でも、まあ治外法権だと思って、ソードワールドファンの皆さん、笑って許してやってください。
- また気が向いたら、更新しますね。
- 『銀光の牙』『影断者』『ハーフシルバー(2代目銀光の牙)』『1000倍隊長エシャ』『暁の魔導士』…………等々、書きたい話しは沢山ある。無いのは時間くらいで……、表HPの「シナリオ番ちゃぶ台」みたいにならなきゃ良いけど……(他人事かい? おい……)
- では、更新を心待ちにしている一部のファンの皆さん、運が良ければまたお会いしましょう!
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