Kuu Takahijiri's Novel 2
アーリンの日記
その2
- ○月×日
- しばらく書いている暇無かったから間が開き過ぎ。思い出しながらでも書いてみる事にする。
- ただ、思い出しながらだから、ほんと、あやふや、適当、………ま、いっか。私の日記だし。
- ○月×日
- 軍に戻った。
- タラスとサーラさんに報告した。報告って苦手。でも前回はロッツに助けてもらったから、今回はがんばって1人で報告した。結局は任務完了出来なかったっていう報告だから、内心ビクビクした。
- だから、タラスがいきなり立ちあがった時、怒鳴られると思った。
- タラスが凄く青い顔で「逃げろ!!!」
- 何なのか聞く暇も無く、司令官室のドアとか全部開いてオラン軍が入ってきた。剣呑でヤバい雰囲気。窓の1つが1人だけだった。そいつ蹴飛ばせば窓から突破出来るかもしれない、落ちたら怪我しそうだけどこの状況じゃ、しょうがないか、で、ロッツに目配せした。隙みて動こうとしたけど、ロッツは兵士に、私はサーラさんに取り押さえられた。
- ??
- なんなのよー!! って感じだった。
- 八世、あと他の軍の人たちと一緒に捕らえられた。
- ○月×日
- 反乱軍として逮捕され、オランに護送された。
- 即位の事に関して、オラン軍が動いたそうだ。もう1つあるって噂だった『青の月光団』も一緒に護送された。隊のほとんどは逃げていて、捕らえられたのは2、30人程だったみたい。逮捕された人達は、私達と同じように軍に戻った所を待ち伏せされたみたい。八世は強固な牢屋に、タラスも別の所に入れられた。例の、即位の儀の為に探していた盲目の賢者アウグステの杖、これに関与した実行犯がより刑が重い、つまり、私達。個別に牢に入れられた。
- 裁判を受けた。詐欺罪。魔術師ギルドに申請した時の申請理由だそうだ。禁固2年。普通なら気にもされないような事が取りざたされたのって、反乱軍だからだったみたい。
- カンブコウホって事で、さらに取り調べを受けた。いけだかで感じ悪かった。何で集まったのかって聞かれたから、正直に張り紙を見たって言ったのに「嘘付け!!」
- プチッ。
- 内心キれた。けど、こういう場合何言っても意味無しと思って堪えた。こういう手合いって、ムキになって反論すると逆効果。しかし。たかがアレで禁固2年。こんなんじゃ、余罪でっち上げられて禁固○十年とか下手したら死刑も有り得るかも!?
- 冗談じゃない、シャーマンレベル上げて、シャナ姉ちゃんと楽しく暮らす私の将来設計をこんな事でぶち壊されてたまるか、と思った。
- 隙みて逃げられないかどうか気を配ってみたけど、何か無理そうだった。結構警備しっかりしている、とか考えていたら、面会者としてサーラが来た。
- 私達に、「条件によっては罪を許してやる」と言ってきた。
- 条件ってナニ。
- 私らをこんな状況にして置いて条件突付けるのか。この状況で、今アナタが言ってる言葉が、信用されると本気で思ってんのか?
- フザケルナ。
- 八世やタラスを殺せとか言ったらどうしてくれよう、とぶちきれる一歩手前になった。
- ロッツ「話だけは聞く、判断はそれからさせてもらう」…………いや、壁越しとはいえロッツが側に居てくれて感謝。お陰で何とか平常心に戻れた。なるべく冷静に考えるよう気を付けなきゃ、この状況では先がどう転ぶか判らない、情報は多い方が良いと思った。
- 取敢えず、話だけ聞いてみる事にした。
- サーラ曰く「明後日、3日後に詐欺の今回の首謀者、ファル・H・アウグステが死刑される。オラン側としては、ファルの死刑により今回の騒ぎは淘汰。ファルが全て今回の事件の暗礁おおい隠したまま、処刑される。彼女を逃がしてやって欲しい」
- ?? ナニイッテルンダ?
- そういう状況にしたのはそっちだろう、って感じだった。
- サーラは本名ディア・ド・ギャグレイ。オランの軍人。もう1つのアウグステ軍『青の月光団』副官ローレン、本名シルビア・T・ギャグレイとは姉妹だそうだ。サーラ曰く「短い間だが、2人の偽の王にそれぞれ仕えた。短い間だが私は実際ファルと接していた。ファルの雰囲気、いでたちからして、何処かの王女に違いない。ファルの素性は私もファル自身も知らないが、ファルに邪悪な念は無い。助けて欲しい」
- 姉妹にそんな権限があるのかと聞いてみると、「牢から逃がす手引きは出来る」
- そう言われても、この牢は警備がしっかりしている、本当に逃げられるかどうか、と考えていたら、更にサーラが言うには「今回の逮捕自体、姉妹の本意では無い。オラン自身も2つに分かれている」
- 派閥争いか? オランが? 王さまは何やってんだ、何の為の頭なんだか、と思った。
- 他に協力者が居るかどうか教えて欲しいと言ってみたが、「そんな時間は無い、そんな状況では無い」
- この面会自体も、反対の方の派閥に知られないよう来たって事かな? すぐ返答しなきゃいけ無いのか、でもなー、一度裏切られているから、今一、サーラ、信用できなかった。また、裏切られ無い保証なんてどこにも無いし、と思ったので、本当に協力すると約束出来るかと、再度念を押して聞いてみたら、「我々は貴方方の味方だ」
- ………………あ゛ー!!! もういいや!
- どうせこのままここにいたって、ロクな事になりそうになかったし。八世は、まだ小さい子供なのに、その子供相手に、責任どうこうだ!? どう考えたってタラスだろ! 八世、ファルには多少面識はある。それに見せしめに死刑なんて、嫌な感じだし!危険度高くて嫌な賭けだけど、この賭け乗ってやる! と決めた。
- ロッツも特に反対しなかったから、協力する事にした。
- 死刑まであと3日しかないし、ファルが何処に居るか探さなきゃならない、見付かった場合を考えて、武器も何処かで調達しなきゃ。でも、まずこの牢から出られない事には何も出来ない、って考えていたら、あっさりサーラさんに牢の鍵を開けられ、外へ出られた。装備一式持って来ていて渡された。「姉がもう2人に頼んでいるから、その人たちと合流すれば、逃げ出せる可能性が高くなる」と言われた。
- 結構用意周到。それだけ本気って事か、と思った。
- ここは地下2階の牢屋で、ファルがいる所は地下3階だそうだ。アウグステ八世、ファル・H・アウグステ、本名、ファナだそうだ。何でも、ファナ本人、名前だけ、覚えていたそうだ。
- 牢の外へ出られたので、取敢えず、気分は大分落ち着いた。しかし、ファナの所まで無事に辿り着けるか、うまく逃げられるか、しかも、今度相手するのはモンスターじゃなく人だ、と考えるとまた気が滅入った。私達と同じ、単なる下っ端。そいつらと戦うのは気が進まない。なるべくそうならないよう祈っとこ、とか考えていたら、3階までは安全を確保出来ると言われた。
- ヲイヲイ。
- いくら派閥争いでもめてるからって、たかが派閥がそこまで出来るなんて、今のオランって危ない感じだな。ま、私には関係ないけど、とこの時はそう思った。
- その後サーラが言っていたもう2人と合流。以前、会った事があった。オートルの『飼い慣らされない羊亭』のアベック。私達は白のだけど、そっちは青の軍だったのかとか、取敢えず、簡単な自己紹介をし合った。
- ファイターのクリス。
- ソーサラーのシルビス。
- そんなに冒険経験してないけどよろしくとか話しているうちに、何だか似た様な経験していた事に気付いた。
- そうだったのかー、と何だか初対面の感じがしなかった。クリスとシルビスもそうだったみたいで、直ぐ馴染んだ。ま、積もる話は無事逃げ延びてから、まず、ファナの所へ行こう、という事で先へ進む事にした。サーラは協力者が居ると言っていたが完全には信用出来ないから、気を付けて進もうとした。が、何故か警備兵、私達の方を見て見ぬふりだった。
- 見なかった事、か。
- 協力者が居るってこういう事か、と思った。すんなり地下3階に着いた。私達が脱走した事がバレた場合、少なからず責任取らされるだろうに……。クリス小さく「感謝」と呟いた。同感だった。
- ファナの牢、大きな扉の前に構えていた警備兵がスッと身を引いた。そこの鍵、開いていた。同じく感謝。
- 扉を開けた。
- 真正面に彼女が見えた。
- 牢とはいえ室内豪華で、一瞬ここは一体何処だ? と思った。
- 貴族か王様の為の様な豪奢なでかいベッドに、チョコンと座っていた。
- いきなり入ってきた私達にも大して驚かず、淡々と、
- 「何ですか騒々しい」
- 後で考えればあの部屋、豪華ではあったけど牢以外の何物でもなくて。貴族か王様の為の様だと思ったのは、ファナの所為だと思う。
- まともに見たのは初めてだったけど、凄く小さく感じた。でも、小さいのにしゃんとしていて。一般的に言えば、高貴な美少女、とか言うのかな。
- あの大きなベッドの所為でより小さく見えたのかもしれないけど。こんな小さな子に全ての責任を負わせるなんて酷だ、やっぱ来て良かったと思った。
- しっかし、この状況でやけに落ち着いているな、と思いつつ説明をした、が、ファナは「アウグステの王国が成らなかった以上、自分が生きていても仕方がありません。でしたら、わたくしの死をもって、他の方を許してもらいたい」と言って、逃げる意志は無いみたいだった。
- クリスが「何処かの国の関係者なのではないですか」と聞いても「アウグステの第八世です」思い込まされているのか、自分自身そう信じているのか解らなかったので、私のセンスオーラとシルビスのディスペルマジックで調べてみたけど、マジで言っていた。
- でも、ちょっとまって、そんな犠牲の上に成り立つなんて……、と考える暇も無く、
- ロッツ「ぐずぐず言ってないで、早く逃げるんだよ!」とファナを抱き抱えていった。
- クリス&シルビス同時に「ロッツ! それは犯罪だ!」「そうよ! セクハラよ!」息ぴったり。
- ロッツ「ん? そうか?」って気にしてないみたいだったけど、そうなの! それに! 荷物みたいに小脇に抱き抱えるのはやめて欲しかった……。
- ファナは「無礼者!」とか言ってばたばた逃れようとしているみたいだった。
- けど、どう見ても、『パタパタ』と動いているようにしか見えなかった、…………こんな時に何だけど、やっぱり可愛い、と思った。普通にしていると凄い美少女だし、さっきの受け答えからもサーラさんが何処かの国の王女ではと言うのも肯ける。けど、やっぱりまだ子供。仔猫みたい。パタパタなんて可愛すぎ~、とちょっと一瞬見とれてしまった。
- ファナがパタパタ動くから、ちょっとロッツが抱きかかえずらそうだった。
- でも、どうしよう、無理矢理連れて行くのは嫌だけど、どうすれば納得してくれるんだろう、と迷っていると、
- クリス「あなたが生きて逃げる事を数多くの人が祈ってるんです。だから、今は、逃げる事を考えてください」と説得したところ、
- ファナ「………………わかりました。この命救われましょう」何とか一応納得してくれたみたい。
- 牢の中の構造わからないけど、取敢えず地上へ向かえばどうにかなるだろうという事で、まずはそこを出て1階、地上へ向かう事にした。逃げる途中、「脱走!」と声がした。そんな急がなきゃって時に分かれ道に出た。時間が無くて集中出来ない、聞き耳も魔法も出来なかった。クリス、ロッツに聞こうとしたけど、ロッツってば何も言わす真ん中突っ走っていった……クリスも「お前先行くな!」って追っかけてった……もういいよそっち進もう、と、真ん中の道進んだ。兵士約50人程追って来たが、通路が細かったお陰で、逃げ足は人数少ない私達の方が有利だった。
- 何とか牢屋敷から脱出成功した。
- オランの城から離れた場所に出た。ちょうど真夜中くらいだったと思う。そのまま進むとオランの中央広場まで出た。道が八方に分かれていて、私達が出てきた道以外全て検問が張られていた。総勢250名程のオラン軍に囲まれた。
- 何かいけ好かない奴が前に出て来た。
- 第一団最高責任者フラネだそうだ。クリス曰く、青の責任者デボネを一刀のもとヤったそうだ。白のタラスはその場で処分なんてされなかったから、その場で処分する必要は無かった筈。それに、タラス武器持ってなかったからデボネって人もそうだった筈。武器も持たない反撃出来ない相手に必要無いのに一刀の元にヤったなんて、やっぱいけ好かない奴だと思った。
- クリスが「勝てない」と漏らす。今は逃げるのが最優先だから別に勝てなくても良いんだけどと思ったが口に出す暇も無く、奴、フラネが条件を出してきた「命は助けてやる。代りにファナを引き渡せ」
- 嫌だ。
- 丸腰の捕まえれば良い相手をヤるような奴に条件出されたって誰が信じるか。けっ。とか思った。
- クリス「何故ファナをそうまでして執拗に殺そうとするんだ?」って言ってるうちに、第二団が合流してきた。
- 第二団最高責任者、ローレンもといシルビアが来て、フラネと言い合いをはじめた。
- シルビア「ファナは利用されていただけ、この逮捕は違法行為、隠密命令だというならその命令に正義は無い、そう祖父の名に賭けて断固阻止する!」
- 対するフラネは「王の隠密の御命令だ、貴様もオランの人間なら国益を第一に考えろ、この少女は生かしておく訳にはいかないのだ」とか言い合っていた。
- そうこうするうちに、フラネ「かまわん! 5人ともみな殺しにしろ! ファナの死体を取りあげた者には二階級特進のチャンスを与える!」
- なんなんだそれは!!
- こんな小さい女の子、殺したら昇進させるだ? フザケルナ。
- 勝手に二階級の特進決めるなんて、全オラン軍の最高責任者なら有り得るかもしれないけど、たかが一団の責任者だろ? 変! 普通特進とかって王様とかが与えるものじゃないのか? と思った。
- シルビアが自分の団に向かって「少女を死守せよ」と命令。第二団はファナを守る隊形を取った。フラネの兵士が襲ってきた。私達もファナを守ろうと囲む形をとろうとした時、ファナがあの例の杖を持っていた。何時の間に?? 皆を見回すと、皆もそう思ったみたいで、互いに顔を見合わせたその時、天空から轟音が響き、オランの中心部が壊滅した。
- メテオストライク。
- 公園一帯、半径50m火の海となった。
- 私達は防御壁に守られて無傷だった。
- 誰がやったのか? 誰が防御壁張ったのか?シルビア達は?
- 何も確認出来なかった。
- クリス「取敢えず逃げよう、俺達を逃がす為にシルビア達は動いてくれたのだから」と言われて正気づいた。このどさくさに紛れて、逃走経路が出来ていた。
- 退路へ進もうとした時、フラネひとりだけが傷だらけでしぶとく立ち上がった。フラネに一番近かったクリスにナイフが投げつけられた。かすった程度ですんだけど。フラネがナイフ投げた後「おのれ…………!」とか言って倒れた。執念深そうで嫌な感じだった。
- とにかく、逃げよう! しかし、何処へ向かった方が安全なんだ?? そんな時声が掛かった。女性の声で「こちらです」と。見た事無い人だった。クリスとシルビスは面識あるみたいだった。黒髪の人間で、一見僧侶っぽい少女。信用出来るかどうか迷っている暇は無かった。取敢えず行くしかない、で、ついて行った。
- その少女に導かれてオラン港へ着いた。
- 中型船に乗って脱出しアウグステへ向かった。
- 船の中、余裕が出来たので自己紹介。
- 少女の名前は、エマ・サンド・ルバ。19歳。……ロッツが目をキラッとかした気がした。ま、ロッツは女性に無理強いはしないので放って置いた。けど結局、エマ自体がファナ以外興味無いみたいで、ロッツを相手にしてなかった。ロッツ、途中でシルビスへ蝕指変更。けどシルビスはそれ以前の問題だった。ちょっとシャナ姉ちゃんを思い出しちゃった。シャナ姉ちゃんはぽやぽやで、キビキビしたシルビスとは全然似てないけど、時々凄いボケをかましてくれるところとかが似ているかもしれない。ロッツに話し掛けられて、それをクリスに振っていたっけ……クリスもクリスで真面目に答えて……。クリスとは恋人ではないそうだけど。しかし……、ロッツ、客観的に見ても十分格好良いと思う、けど、あの場合格好良い分……可哀相というより………………そう言えばこの時も、笑っちゃ駄目だ、と堪えたっけ。
- それよりも、エマ。
- エマはプリーストだそうだ。「ファナ様にお目通り願いたく馳せ参じました。間に合って良かった」
- クリスがいろいろエマに聞いたところ、エマ「あの防御壁は私ではありません。ファナ様について、全てを知っている訳ではありません。ただ、このファーランドにあっておそらく一番高貴な血の方。ファナ様に会いに来たのはお告げによって導かれたからです。夢。神の御告げによって」
- エマはドラゴンプリーストなのだそうだ。「ドレイクのおそらくスピリットのお告げにより、私はこの地にはせ参じました」ドラゴンプリースト。自分がドラゴンに生まれ変わるのを目的に精神修行を行っているって聞いた事がある。ただ、その目的の為に手段を選ばないとも聞いた事がある。
- ドラゴン。別名『神殺しのケモノ』とも呼ばれている。神により近い存在、実在すると言われ、人より知能も高く、力も強い。ファーランドにはドラゴン実在していると言われている。リザードマンのノーブルがいるとも。ドラゴンを信仰する種族も存在しているそうだ。エマは、その信仰している種族なのだそうだ。
- そのエマがファナに対して敬意を表して接していて、その危機に駆け付けた。
- これはどういう事なんだろう…、ファナはもしかして、その関係者なのか? 皆もそう疑問に思ったみたいだった。
- シルビスが更にエマに聞いたところ、メテオストライクをしたのもエマではなく、1人でここへ来たそうだ。
- エマ「既に運命の軸が見えたので、貴方達の側に居れば、何れは、ファナ様と接触出来ると解っていたので、ずっと寄り添って見ていたのです。何度か姿を見られてしまいましたね」と言って、フフとたおやかに笑う。
- ? と疑問に思っていると、クリス達が説明してくれた。クリス達の方は、盲目の賢者アウグステの杖ではなく、杖に付いている石『アウグステの憂い』の入手の為動いていたそうなのだが、何度か姿を見掛けたそうだ。
- けど、あの笑い方、本当に19歳? それとも信仰心深いと、ある意味人生達観するのかな、随分とろうたけた笑い方するなー、と思った。
- クリス「これからどうするつもりなんだ?」
- エマ「ファナ様のお側に居させて下さい」
- 当のファナは、何も解らないそうだ。
- ファナ自身も全てを知っている訳では無いからなー、どうしようか、と思った。
- クリスがエマに敵では無いか聞いた。当の本人に聞いたってそんなの正直に答える訳無いじゃんとか思ったら、エマ、真面目な顔して答えていた…………。エマ曰く、敵と言う言葉自体、彼女の世界観に存在してい無いそうだ。どういう世界観なんだろ、敵が無いなら、味方も存在しないんじゃないのか?と思ったが、突っ込んで話すと面倒くさくなりそうなので止めた。
- ロッツが本心としては無条件信用なんだけど、どう思う? って聞いてきた。アナタの場合は対象範囲内って事で甘くなってるでしょって突っ込む前に、自分から言ってた。自覚あるんなら良いんだけど。
- この場合、助けてくれた人を信用するのが常套だろう。でも、助けてくれたけど、あまり信用出来無い気分だった。邪悪な念が無いか魔法でわかれば少しは安心出来るかなー、……と、サーラさんの件からあまり人が信じられなくなっていた。サーラさんも実は裏切りたくてした訳じゃないってわかったけど。助けてくれた人を信じられないなんて嫌だな……でもファナに執心しているみたいで不安だ、でもでも、本当にファナを尊敬しているみたいだし、と考えがまとまらなかった。この状況じゃ、判断材料が足りなさすぎ!! と思ったので、半分信じて半分信じられないってとこかな、と言っておいた。
- 助けてもらった事は感謝している、けど、今までファナに関して起こった事や経緯を考えると用心するに越した事は無いでしょう、って感じだった。
- クリス「取敢えず、命助けられたようなもんだからな。だが、何かあったら殺す」
- 間髪入れずにシルビス「ホント物騒ねあんたって」
- 息ぴったりだけど、仲良いんだか悪いんだか……。
- 取敢えず、一応エマを信用する事にした。
- 命を助けられたし、この船に乗れたのもエマのお陰だから、と皆の意見がまとまったところで、
- シルビス「クリスの傷、治さなきゃ」
- そうだね、って言ってるそばからクリスが倒れた。
- 掠り傷なのに何で!? と混乱しつつ、船医に見てもらったところ、オラン熱だそうだ。
- 最近、オランの要人が次々と死を遂げている謎の病気だそうだ。
- 船医「現在の所治療法は確立されていません」
- ちょっと待って。
- 何故それがクリスに?
- それよりも!!
- 治療法が無いだと?!
- ロッツ「伝染病なのか?……」
- それなら私達だって同じように発病して良い筈、と思った。
- ロッツ「……フラネのナイフの所為か?……」
- 船医「私は文献で事実として知っているだけだが、まさかナイフなどによる外傷からの傷の所為だとは思いませんでした……」
- ロッツ「破傷風とかあるけど、そこから熱を出す事もあるから、オラン熱って言われても別におかしくないな。しかし、フラネに故意的に投げられたナイフの傷……、人工的なものも考えられるな」
- フラネ、マジで嫌な奴だ、と思った。
- 治療法が無いなんてどうすりゃ良いんだよちくしょう、って状態だった。
- 船医にも手伝ってもらって、いろいろ看病をした。幸い、エマがヒーラー出来た。
- けど、献身的な介護も虚しくどんどん悪くなっいった。
- クリス「さすがにきついな。もう無理か……」
- って、そこであきらめるんかい。何か手がある筈。仮にも戦士なら、戦って死ぬならまだしも病気でなんて死ぬもんかくらいの根性持ちなさい! って言ってやろうかと思ったけど言えなかった。だって、マジ辛そうだった。男の人が泣きそうだなんてよっぽど辛いんだろうと思った。
- ……そうこうするうちに、2日後、クリスは意識不明の重体に陥った。船はもうすぐアウグステに到着する。
- 何か治す方法が無いか。ロッツが、クリスの症状を調べてみた所、今回の症状は現在知られている毒により発病するどの病気にも属してい無いそうだ。自分達だけでは解らないのなら、知っている人を見つけるか、調べるしかない。けど。一般の文献に載ってない治療法。調べるのは困難を極めそう、それまで、クリスがもつかどうか……まだ決まった訳じゃない。何か策がある筈。という事でアウグステに着いたら調べる事にした。
- エマ「静かな所で、病気を治せないまでも、病気の進行を一時的になんとか止めてみるので、その間に、これを治す薬を探して下さい」
- 毒に詳しいのは盗賊ギルドだから、盗賊ギルドに調べに行くしかないかとか皆で相談していたら、エマがぽそっとつぶやいた。
- 「万能薬があれば」
- そんなのあるのか! なら、それ探そう!