Kuu Takahijiri's Novel 5
アーリンの日記
その5
- 扉がこちら側に倒れてきた。
- ロッツの靴の爪先がちょっと削れた。鼻先ギリギリをかすって倒れた。
- 危なー。罠感知で大丈夫だったのは、あくまでもドアなので、ドアが開くという解釈で罠感知に引っかからなかったんだそうだ。
- 開いた瞬間に、遺跡に薄灯りが入ってきた。隠し通路の壁自体がちょっと光を帯びているみたいだった。
- シルビス「シーフの人、中見てもらえる?」
- ロッツ「はあ゛い」
- ロッツ、渋々調べ始めた。随分嫌々だなー、何が不満なんだ? ナンパ対象が居なくて張り合いが無いのか? まあ、シルビス天然だからしょうがないじゃん、この一件が無事終ってクリスが側に居なければ少しは上手くいくんじゃない? と言ってやろうかと思ったけど、やめた。他の女性の居る所に行けばその人ナンパするんだろうから、一時的な気分だろうし。放っておく事にした。
- クリス「けどよー。この先にミスリルゴーレムの守ってるもの在ったりしないよな。で、ミスリルゴーレムに攻撃されたりして」
- シルビス「大丈夫。何も悪い事しなければ大丈夫よ」
- そうよねー、何も悪い事しなければ。ねえ? ただ調べてるだけだし、と思った。
- 壁に何か、細かい金属粉が付着していた。広範囲にちょこちょこと、いっぱい付いていた。
- 何だろう? と思ったら、
- シルビス「これ、ミスリル銀よ」
- 人工的に付けた風ではなかった。ミスリル銀が付着してしまった感じだった。元は普通の壁石のようだった。
- シルビス「ミスリルゴーレムがいつも通るから付いたって事?」
- ミスリルゴーレムは元々ミスリル銀を死ぬ程贅沢に使っているからその所為で? と思った。
- ロッツ「ミスリルゴーレムが歩く事で、擦れて付着したのか?」
- でも、ミスリル銀を擦らせる事が出来るのはミスリル銀だけ。壁に擦って歩いたくらいではミスリル銀は付かない。ミスリル銀が自然付着するくらい、ここはミスリル銀が多い? 豊富にあったって事?
- ロッツ「ミスリルの産地ってか? 元々はミスリルの産地があったという話がカストゥール時代であったのだから、もし、この遺跡がその時代から在ったとすれば、ここはミスリルの産地か鉱山かもな。カストゥール時代は加工技術もあったしな」
- 以前の吸った光を放って光沢を放っていた。それで薄明かりが出るくらいだから、もう随分長い事開けられていなかったのだろう。この遺跡は地下だしこの隠し通路が開くまで、真っ暗だったから。
- どうする? この通路進む?
- ロッツ「調べながら行くか、でも、危険無いかなー」
- レンジャー技能持ってるのってロッツだけよね。
- シルビス・クリス・私「頑張って(頑張れ)ロッツ」
- ロッツ「またプレッシャー掛けるなよ」
- クリス「名誉挽回、汚名返上」
- ファナ「失敗しないでくださいね」
- などと皆で軽口を叩きつつ、ロッツを励ました。
- ロッツ「止めてくれって」
- 一応、人の気配もモンスターの気配も無いそうだ。
- シルビス「進んでく?」
- クリス「そうだな」
- 通路は横幅が人3人漸く通れるくらい、高さは大体人間の大きさの1.5倍から2倍の高さ、床は石畳、完全な人口通路という感じだった。
- クリス「このミスリル銀全部持ってって後で加工出来ないかな」
- ロッツ「加工技術が無いって」
- クリス「そうかー、残念」
- シルビス「記念として持って帰るか」
- クリス「そうだな、記念として」
- ロッツ「おい、お前ら持って帰るもん多くないか? アッシュの時といい」
- そうだね。けど、アッシュの時、ロッツが1袋足りないって言ってたの、てっきり数え間違いか見落としたかだと思ったんだけどなー。
- クリス「アッシュは持って帰ってからちゃんと提出したぜ」
- シルビス「提出したもん」
- クリス「いや、これは持って帰ってカネになるかな、とか」
- アッシュの次は金属粉か、クリス、粉が好きなの? と聞いてみたら、
- クリス「違う。あれは証拠として提出したんだ。これはカネになるかなと」
- シルビス「ファナ何か感じる?」
- ファナもここは知らないみたい。あんまり関係ないのかな、と思った。
- クリス「止めるか? 時間の無駄かもな」
- シルビス「でも、何かありそうよね」
- ロッツ「確かに、隠し通路になっていて怪しいよな。ミスリル銀だろ? カストゥールに関係あるかも」
- クリス「何かヒントが在るかな」
- シルビス「武器が在るかもね」
- ロッツ「進むか」
- 突き当たりに着いた。
- 部屋に入るとさっきと同じ様な明るさだった。結構広めの部屋。10m×2くらい。ただ、天井が滅茶苦茶高かった。そこにクリスタルのような透明な大きい三角錐がぶら下がっていた。天井にぶら下がっている透明な三角錐の周りに密集するように何か植物の根のような物が絡まっていた。蜂蜜茎の根みたいだった。それがクリスタルに向って生えていた。集まって、クリスタルに入り込んでいるみたいだった。クリスタル自体が何なのか判断出来なかった。恐らくクリスタルの真下から床に何かの滴が落ちて、それの液状にした物が床に広がっていた。少し緑がかったものだ。ただ、緑ではあるけど、植物の緑ではなく、ゲル状の緑。それが液体になった状態で床に広がっていた。
- 何だろう。壁と同じ光を放っていた。
- ロッツ「ミスリル何とか? ミスリル銀の液状?」
- クリス「ミスリル銀?」
- シルビス「ミスリル……水銀?」
- クリス「水銀?」
- ロッツ「ミスリル水銀?」
- ロッツ・クリス「怖い」
- ミスリル銀の液体?
- 調べてみた所、今は完全な金属だった。液状みたいに広がっているから液状かと思ったけど、固まっていた。ミスリル銀。
- シルビス「持って帰ってもしょうがない。加工出来ない」
- ロッツ「広がった状態で固まってるって事は、水が氷のように固まっている状態と同じ状態?」
- クリス「何でそんなもんがここにあるんだ?」
- シルビス「何でだろ? このクリスタルから落ちてるから、クリスタルが原石?」
- ロッツ「クリスタルからミスリル銀が出て来たのか?? じゃないよな。伝って来たんだよな」
- 蔦っていうか、茎?
- ロッツ・シルビス「蜂蜜茎が」
- クリス「蜂蜜茎がミスリル銀の元なのか?」
- ロッツ「でも明らかに違う緑色だよな。あ、でも変色した?」
- 茎の汁で溶ける? そんな訳無いよね。
- ロッツ「もしかして万能薬が、実はミスリル銀溶かす?」
- 粉のように付いていたミスリル銀。常に土壌にはミスリル銀が目に見えないくらいの大きさで含まれている。ミスリル銀はミスリル銀に集まり、徐々に大きくなって、人間の目で見えるだけの大きさになって光り輝いているだけ。
- ミスリル銀は煮ても焼いても削っても折れない、溶鉱炉でも溶かせない。だから人間には加工技術が無いと。そのミスリル銀の加工技術が古代カストゥール時代に在ったとすると、そのカストゥールから移って来た一部の人間がここに入植したとしたら、ここに、ミスリル銀のプラントとして育てていた植物が多分蜂蜜茎。不味いの旨いの甘い等は単なる副産物。本当の目的はミスリル銀を加工する為のもの。蜂蜜茎の渋い成分がミスリル銀を液体のまま留めておく。液体から固体にするのは、そのまま自然乾燥して、中に入り込まれている水分が蒸発すればなる。型に流し込んで置いておけば、型に詰めた状態で固まる。後で聞いた所、ミスリル銀が濃いので、液体がどのような状態で混ざっていても、比重はほとんど変らないそうだ。
- 最近このプラント使われていないので、大量に茂った蜂蜜茎からミスリル銀は注出されていない。少なくとも剣一本くらいは作れるかもしれない。
- ロッツ「良かったなクリス」
- クリス「持っててどうするんだ? 凄い筋力必要になるんじゃないのか?」
- ロッツ「ミスリル銀は自分の必要筋力の3分の1で自分の必要筋力のと同じ効果の武器持てるから、つまり、クリスの体格で持てるバスタードソードの打撃力3倍のが作れる」
- クリス「怖。凄げーな」
- シルビス「でも本当に作れるかな」
- クリス「ファナ解らないかな」
- ロッツ「ここに見覚えないんだから、解らないだろ」
- 作るの良いけど、その為の型を探さなきゃ、と思ったら、壁を見回したらずらっと石で彫られた板が並んでいた。鋳型。鋳型に古代文字が書かれていた。カストゥール文字。
- クリスが惹かれて前を動かない鋳型があった。その鋳型にはカストゥール文字で、『銀』という言葉と『光』という言葉が書かれていた。
- クリス、にやっ、と笑ってて、シルビスに「クリス、怖いっ」と突っ込まれてた。
- 色んな大きさ、形の鋳型が沢山あった。中には、どうすんだこんなデカイ剣、っていう鋳型もあった。『銀』、『牙』と書かれている鋳型と、『影』と書かれている鋳型は割と新しかった。『影』と書かれている鋳型は残りに古代語で書かれている言葉があって、かなり特殊らしく、落ちてくる滴に何かを添加しなければ作れないみたいだった。同じ形のミスリル銀の剣は作れても、本物の『影』なんとかは作れないみたいだった。
- 取敢えず、クリスが持つのにちょうど良い大きさの鋳型を探さなきゃ。
- ロッツ「取敢えず、探そっか」
- シルビス「どう探そうか」
- ロッツ「クリスが」
- シルビス「これだって思う物?」
- クリス「これだって思う物??」
- シルビス「じゃ、クリス」
- クリス「わかんないって!」
- シルビス「君の勘で!」
- ロッツ「見たらわからないか? クリスの持ってるバスタードソードに合うような……違った、それだと必要筋力3分の1ってだけで、打撃力は同じで意味無い…………あ、でも、クリスもう結構レベル高いよな?」
- クリス「6レベル」
- ロッツ「戦士の勘をフルに活用して、自分の経験から、自分がもっとも使いやすいな、って思うものを選べ」
- クリス「と言われてもなー」
- シルビス「頑張れー」
- クリス、探し始めた。
- けど、何か違う……。
- ファナに「何をやっているのですか。もっと真剣に探してください」
- とか言われていた。
- クリス「だって解んねえんだよー。大体俺、古代文字なんか読めねえもん」
- ロッツ「いや、クリスの勘でいいんだって、勘で」
- クリス、日本刀みたいな鋳型を見つけた。凄くシンプルな形。両手持も片手持も可能みたいな感じ。かなり細身。本来もしこれを鉄で作ったらあまり強度が無いのだが、ミスリル銀なのでほとんど折れる事は無い、ミスリル銀同志の戦いにならない限り。クリスの身長より少し長めだった。
- ロッツ「エライ長い剣が出来そうだな」
- クリス「でも、俺これ引きずって持ち歩くのか?」
- シルビス「背中にしょって」
- ロッツ「引きずって」
- とにかく鋳型降ろそうか、って事で、2m近くある石を皆で倒した。
- しかし一枚では出来ないから、これに合った被せる方皆で探した。この鋳型にも何か書いてあった。
- シルビス「『未開の島』って書いてある」
- クリス「ファーランドって事か?」
- ロッツ「随分意味深な」
- 後で聞いた所、恐らくこちらに移って最初に作ろうとして結局作らなかった物らしかった。
- シルビス「大丈夫なのかな、んなの私達作って」
- ロッツ「でも俺達それに魔力を付加させる事は出来ないから、単なるミスリル銀製の剣なだけってだけだし。ミスリル銀自体のの魔力以外魔力を付加させる事は出来ないからな」
- 後で解った事だけど、ミスリル銀に自ら光る力はない、しかし、緑がかって光っていたミスリル銀。植物を持って来たが、その植物によってファーランド特有の土地を介して、ミスリル銀の気質が変ったのかもしれない。ファーランドの大地の力が宿ったのかもしれない。
- 固まるまでかなり時間掛かりそう。1日くらい休めないかな。寝たいなー。精神ダメージ回復したいなー。
- ロッツ「解った。俺見張りに立つよ。俺どうせルーンマスターじゃないしぃー」
- サンキュー、ロッツ。
- と言う事で休んだ。
- 剣が固まった。
- さて、固まって剣が出来たのは良いけど、このままじゃ持てない。鞘も無いし、握り手もミスリル銀だからダメージがそのまま持ち手に返ってくる。
- ロッツ「布でも巻くか」
- そんな布あるかなー、と荷物をひっくり返してたら、ファナが剣の柄に自分が着けていた呪文が書かれたバンダナを巻いた。
- クリス「ありがとう」
- シルビス「取敢えずこれで使える剣になったね」
- クリス「でも鞘が無いんだよな」
- ロッツ「危ないな。あれ? アーリンの親父、職人だよな? 作れないか?」
- 良いけど、手伝いしかやった事無いから、完成まで作った事って無いよ? やってみるけど、と作った。
- よし、出来たよー、ちょっと不格好だけど。
- クリス「………………ヲイ」
- 頑張って作ったよー。
- クリス「……いい。後でアーリンの父親に作り直してもらう、戦い終わったら」
- えー、せっかく作ったのにー。
- ロッツ曰く、凄く不格好で、ただ長い、丈が余っていて、引きずってたそうだ。
- 真面目に作ったんだけどなー。
- クリス「取敢えず、怪我しないだけましという事にしておく。緊急だしな」
- ロッツ「でも何か、それに絶対誰か足引っかけて転びそうだよな」
- シルビス「滑車でも付ける? ガラガラガラ」
- クリス「それはすげー嫌。とにかく鞘も出来たし、行くか。皆のも出来たよな」
- まだ。
- クリスの剣を作るついでに作ったロッツと私が持つミスリル銀のダガーの分はまだ出来てない。
- 作ってる間、4人で色々話してた。
- 後で聞いた所、
- シルビス「私は持てない」
- クリス「そうだな」
- シルビス「メイジスタッフ、杖無いのかなー」
- クリス「ミスリル銀のか?」
- シルビス「そう」
- クリスぼそっと「恐ろしい」
- シルビス「つまんないな。私だけ何も無い。ファナー、私にも何かないかなー」
- ファナ「良い事もあれば悪い事もあります」
- とシルビスの肩に手をポンと置いて言ったそうだ。
- 流石若干10歳で死を覚悟しただけあるわ。
- シルビス「ソーサラーでさーあー、ファイター技能取ってさ、杖が隠し武器だったら面白いと思わない?」
- クリス「器用貧乏になりたいのか? もしかしてソーサラーじゃなくファイターになりたかったのか?」
- シルビス「だって、隠し武器っていうのが格好良くない? シャキン、とかいって」
- クリス「そういう問題か。盲目の賢者になったら出来るかもな」
- シルビス「嫌」
- クリス「盲目で」
- シルビス「嫌だ」
- クリス「つまらないもので御座いますが」
- シルビス「絶対嫌」
- シルビス「だってさー、『もう呪文使えないだろう』とか言われながらさー、シャキン、って出すんだよ?」
- クリス「アブねー」
- シルビス「ね? カッコイイでしょ? 『何』とか言って構えて」
- クリス「『これが普通の杖に見えるお前は愚かな奴だ』ってか? シャキンっとかって」
- シルビス「そうそう」
- ロッツ「そんなミスリル銀の杖あるかぁー? 魔法の発動体にならないだろ」
- シルビス「杖の握りの部分だけは同じだから、鞘だけ」
- クリス「そうそう、目くらで」
- シルビス「嫌」
- ロッツ「持ち手の部分だけミスリル銀?」
- シルビス「そうそうそう」
- ロッツ「何だかなー」
- クリス「しかも一瞬なんだよ。居合いだから。シャキン」
- ロッツ「『またつまらぬものを切ってしまった……』ってか?」
- クリス「違うよ。頭丸刈りで」
- シルビス「違うもん」
- クリス「頭丸刈りにしてみるか」
- シルビス「嫌だ」
- 等と話してたそうだ。
- 何とか出来上がった。けどまた、ちょっと不格好だった。もう、取敢えず使えればいいよね、とロッツに言ったら、取敢えず、は、これで良いそうだ。もういいよ。ロッツも気に食わなければ後で父さんに作ってもらってよ。
- もう入ってから1日は経ったよね。それとも2日経ったかな。
- ロッツ「出ようか」
- シルビス「ねぇ、このクリスタル、魔晶石っぽくない?」
- クリス「それっぽくはあるけど」
- シルビス、凄く目をキラキラさせてた。
- 後で解ったけど、あのクリスタル自体が1つの巨大な魔晶石だった。
- ロッツ「でも確か、魔晶石ってミスリル銀でしか削れないんじゃないか」
- シルビス「ミスリル銀で削れるじゃん」
- あそっか、作ったもんね。
- ロッツ「魔晶石取るって事は、これ一部なりとも壊しちまうって事だろ? 壊しちまったら、ここのプラントもう使えなくなるんじゃないか? どうする? 破壊する?」
- シルビス「でも、高い所にあるよね」
- クリス「10mくらいかな。下の方なら余裕で届くけど」
- ロッツ「でも、んなデカイ魔晶石、誰が持って歩くんだよ」
- シルビス「小さく削って」
- どうする? このまま置いておいて、誰かに見つけられたら、またどんどん作られるよね。
- クリス「自分の事しか考えてないな」
- ロッツ「誰にも言わなきゃ見つけられないと思うけどな」
- でも、フラネに見付からないかな。いや万が一、フラネに見つけられたら面倒だから。あ、でも、探さないか。探しているのはファナと私達だし。
- ロッツ「そうだな、でも先にこの遺跡にフラネの先見のモンスターが来てたしな。フラネに見つけられる可能性は有るな。後で封印しておくか」
- 封印するか、もしくは。
- 破壊するか。
- どうする?
- シルビス「破壊するか」
- クリス「破壊するしかないんじゃないか」
- ロッツ「使い物にならなくしてしまおうか」
- つい、いつものノリで言っちゃったけど、誰も止めないの? と思った。今まで、その時思いついたのを気分で口にしてシャナ姉ちゃんとかに窘められてたから、何だか返って不安になった。良く考えて行動しなさいっていつも言われていたんだけど。
- でも、只でさえフラネと私達とじゃレベルも色んな意味での力でも勝てないのに、更に勝てなくなるかもしれない可能性、潰しておきたいしなー。後悔するのは嫌だし。ま、壊しても後悔するだろうけど、死に際に後悔するのと、生きて後悔するのなら、やっぱり後者よねー。ファナが記憶を取り戻せばこれ作る手掛かりくらいあるだろうし。作り方が解れば、うちの両親みたいな人とかなら、喜んで作るだろうし。
- ああ、でも父さん母さんならヒントだけでも、面白がってやりそう…………………………………………。
- ……ま、いいや。
- 壊そうか、と言う事になった。
- しっかし、もしかして4人とも土壇場の行動パターン似てるのかなー、と思った。けど、この場合もしかして私が唆したのかな……いや、気のせいよね。
- ロッツ「取敢えず、この魔晶石壊すか」
- シルビス「持って歩ける大きさに」
- クリス「削って下に落とせば良いのか?」
- 先端部分を少し削った。
- 後で解った事だけど、先端部分を少し削っただけでも、その能力は無くなっていた。
- ロッツ「誰か削ってくれ」
- シルビス「クリス」
- クリス「ああ」
- ロッツ「あ、俺弓で番えて撃っても良いぞ?」
- シルビス「普通のじゃ無理なんじゃない?」
- ロッツ「ミスリル銀製の弓、作っておけば良かったかな」
- クリス「作る?」
- ロッツ「ミスリル銀製の矢作っておけば良かったー」
- クリス「でも、もったいなくないか? 金投げてるようなもんじゃないか? 金がぎっしり詰った袋投げてるようなもんだと思うぞ?」
- シルビス「後で回収しに行かなきゃいけないんじゃない?(笑)」
- ロッツ「後で回収するか」
- シルビス「でも、刺さった人の方が喜んで、走って逃げていきそう。ラッキー、ミスリル銀♪って」
- ロッツ「解るかー? その前にミスリル銀って。ミスリル銀って解った瞬間に」
- クリス「とにかく、これ壊せば良いんだろ?」
- 下の方は私の手が届きそうなくらいだから、1.5mくらいだった。
- クリスが、ミスリル銀の剣で下の方を壊した。クリスが3つ、シルビスが2つ、私が1つ魔晶石を拾った。
- クリス「でも俺使う機会有るかなー。俺が持ってるより、何かあったらなー、渡しとく。シルビスは持ってるから、アーリンに渡しとくよ」
- って渡された。
- クリス「俺が持っていても仕方が無いから」
- 解った。持っている、と受け取ると、
- シルビス「何で私にはくれないの?」
- クリス「だって、いっぱいあるじゃん」
- シルビス「…………」
- ……シルビス、怖い……。
- この魔晶石は皆と一緒の時に使って、残ってたら後でクリスに返そっ! と思った。
- ロッツ「さて、出ようか。あの、凄い音がしている所まで戻って、アウグステ側に行こう」
- クリス・シルビス「行こう」
- クリス「無事終ったら、ここまた来ようかな。鋳型沢山あるから、商売できるよな」
- ロッツ「レプリカ作って売りさばくって?」
- シルビス「でも石だから重たいよ」
- 無事終ったらね。
- 地下道に入った。
- ロッツ「俺らって、初めの時全然何も調べないでさっきのとこまで来たんだよな。レベルも上がったから、もう1回調べるか」
- 調べるまでも無いんじゃない? 壁に模様というか文字が有る事解っているから、適当に読める所をシルビスに読んでもらえば良いんじゃない?
- シルビス「ファナも居るのにー」と何で私だけ、って顔していた。
- クリス「ファナ」とファナに話しを振ってみたが、ファナ「臭い」
- クリス「そりゃそうだ」
- ロッツ「これで口塞いで」ってファナにハンカチ渡す。
- 流石気配りロッツ。
- シルビス「ファナ読めない?」
- ファナ「読めません」
- クリス「やっぱ、駄目か」
- シルビス頑張って読んでね。
- 古代文字は辛うじて読めたそうだ。右側の壁には、数字で『1000000』と書いてあるそうだ。
- シルビス「千年?」
- クリス「……え? ……ちょ、ちょっと待てぃ」
- シルビス「0が一杯並んだから、千年のとか何かあったじゃない」
- クリス「『千年の野望』『一夜の夢』だっけ?」
- シルビス「うん。でもなんだろうね、この数字」
- クリス「ま、いいや」
- ロッツ「百万って書いてあるんじゃないか」
- クリス「百万って書いてあるのか? でも、何の百万なのか解らないんだな? ただ『1000000』って?」
- シルビス「うん、そう」
- ロッツ「縦棒と丸々丸々って可能性もあるよな」
- クリス「そうだな」
- 私も頷きそうになって、辛うじて止めた。シルビスが……。
- シルビス「もう1回読むよ!」
- って左を読もうとして、古代語と全然違う所を読もうとした。
- ファナに肩をペシと叩かれていた。
- ファナ怖かった。
- シルビス、気を取り直して、再度読もうとした。けど、読めなかったそうで、ショック受けていた。
- シルビスって真面目にやろうとすればするほど、本人の意思に反して空回りしていくタイプかもしれない……。ファナにまた肩叩かれてた。しっかりしてくださいとか言われていた。
- ファナが試しに読んでみた。
- ファナ「『1』」
- クリス「それは数字の『1』?」
- シルビス「ひらがなの『いち』?」
- クリス「……え゛?」
- ひらがなの『いち』って何? 市とか位置って聞くなら解るんだけど……。
- シルビス「だってさー、ひらがなでみるのと数字でみるのと違うじゃん。ひらがなで『いち』って書いてあるのかと思って」
- まぁ、そうだけど。
- ロッツ「ひらがなの『いち』かと思ったって? 違うよ」
- クリス「まぁ、とにかく。右に『1000000』と左に『1』って書いてあるんだな?」
- これだけじゃ解らないから、もう少し進んで、読んでみて。
- クリス「そうだな。シルビィ、頑張れ」
- シルビス「もう嫌だ。読みたくない」
- ちょっと、からかい過ぎたかなー。
- ロッツ「調べたくないのか?」
- シルビス「……むー、解ったよーぉ。でも。だって。むー」
- ロッツ「お勉強だと思って」
- シルビス、きっぱり「嫌だ」
- ……勉強嫌いなのね。
- クリス「貴様それでも幹部候補生だった女か」
- シルビス「そうだ」と開き直りと言うより、逆切れ一歩手前って感じだった。
- クリス、うしろからミスリル銀でチクチクやる真似して、シルビス、むっとしてそれ手で払おうとして、逆にクリス焦ってるし。ミスリル銀使って脅す真似するクリスもクリスだけど、それを素手で払おうとするシルビスもシルビスよね……どっちもどっちって感じ……と思った。
- ロッツ「上手い事いったら、後でお酒奢って上げるから」
- シルビス「お酒キライだもん」
- ロッツ「あ゛……じゃ、食事」
- シルビス、もう拗ねて、何言っても駄目みたいだった
- んー、でもロッツ、遠まわしにナンパの機会考えて誘ってたと思うんだけど。流石シルビス、全然気付いてない……。御愁傷様ロッツ、と思った。
- もう少し進んだ右側をシルビス読んだ。
- シルビス「『99』ナニナニ、って書いてある。最初の9が九十万の位。けど、端数の文字ちょっと霞んでいて読めない」
- 私達が付けた印の所為かな、とロッツに聞いてみたら、「高い所だから、違う。多分水流し込んでたから、腐食が進んでいるんだ。俺らの所為じゃないよ」そっかー、良かった、と思った。
- 左の壁見てシルビス「左は『3』」
- ロッツ「いきなり飛んでるな」
- クリス「2を見逃したのかもな」
- その可能性もあるけど、と思った。
- 行けば良く程、右側は数字減っていき、左は増えていった。
- ロッツ「この数字怪しいな」
- シルビス「天井にもあるかな」
- ロッツ「天井には無い。左右だけ」
- クリス「なんの数字なんだろうな」
- シルビス「何かのカウント?」
- ロッツ「もしかして、アウグステに着いたら、右が1で左が1000000になってるんじゃないか? 片側が百万で片側1で始まったから、向こう側からもし入ったとしたら、左側が百万で右側が1で始まってるんじゃないか?」
- クリス「じゃあ、何のヒントも無かったのか」
- ちょっと待って。その数字がどんどん減ったり増えたりする方向に進む?
- 意味も無くそんな数字わざわざ書くかな、と思ったけど、もし、何の手掛かりも無いようなら、他を探していかなければ時間の無駄、と思った。
- シルビス「いや、でも、その真ん中の同じ数字の所に何かあるかも」
- ロッツ「左右両側が50万の所で? 50万の所でぴったし、って事だよな」
- シルビス「うん。真ん中で何があるか」
- ロッツ「ただ、50万ぴったしで真ん中とは限らないかもな」
- ただ、左と右の数字の位が一緒とは限らない、増減は同じじゃないかもしれない、端まで行ってみないとはっきりした事は言えない、という事で、とりあえず、端まで調べて歩いてく事にした。